物資の、人の出入りがあれば世界中のどこでだって生じうる問題である。
今日は数か月前に訪れたタイ国の首都バンコクで見かけた外来種、特に淡水魚類について少々。
この度のタイ旅行は川魚の観察が第一の目的だったので、必然的水辺にいることが多かった。
そのおかげで超大型の淡水エイであるプラークラベーン(Himantura chaophraya)やキノボリウオ(Anabas testudineus)など、憧れの魚たちと次々に対面を果たしていく中で「なんでお前がここにいるのさ…」という面々にも遭遇してしまった。
まずはこいつ。
ナイルティラピア…かな?
シクリッドの一種、ティラピア。タイではプラー・ニンと呼ばれる。
アフリカ原産の魚なのだが、美味しくて丈夫で養殖しやすいということで今や世界中の温~熱帯域に持ち込まれ、野生化している。
日本でも沖縄の各河川と湖沼、それから大分はじめ各地の温泉地や温排水の注ぐ河川に定着して問題となっている。
ただ、川魚を食べる文化が根強いタイでは日本と違って歓迎されており養殖池も多く、なぜか釣り堀にも導入されている。
上の写真もバンコクの釣り堀で釣り人が釣り上げたものだ。
原産地に近い温暖な気候ゆえ、もう本当にあちこちの水辺にいる。日本でいうブルーギル(Lepomis macrochirus)以上にありふれているかもしれない。
実際何度か食べてみたが、確かに東南アジアで獲れる魚のなかではかなり美味い方だろう。
ティラピアに続いてはこれ
ええっ!
ふ、フラワーホーン!?
もしくはその元となったCichlasoma trimaculatum ?
僕はシクリッドのには詳しくないのだが(シクリッドやサンフィッシュは姿形が整いすぎていて苦手)、
これはどう見てもアメリカン・シクリッド。
アジアにいるはずのない魚だ。
しかもカラーバリエーション豊富。
タイをはじめ東南アジア諸国では、フラワーホーンはアジアアロワナ(Scleropages formosus)についで縁起の良い鑑賞魚として非常に人気が高い。
なのでフラワーホーンやその原種が野生化していてもそう不思議ではないのだが、前情報を持っていなかったので流石に少し驚いた。
観賞魚と言えばこの魚も
観賞魚の代表、グッピー。
小さな水路から公園の池まで、ティラピア同様色々なところで見かけた。
飼育が容易すぎてバンバン増える魚なので、日本では遺棄されがちだが、それはタイでも同じということだろうか。
もう一発観賞魚。
(注:これは沖縄本島産の個体)
プレコ。耳に馴染まぬ和名で言えばマダラロリカリア(Liposarcus disjunctivus)という南米原産のナマズである。
別種のプレコである可能性も無きにしも非ずだが、分布の現状を考えるとほぼ間違いなくこれであろう。
こいつらはバックパッカーの聖地として有名なカオサンロードからチャオプラヤ川に注ぐ水路に多かった。
水が濁りすぎていたのと、水面になかなか姿を現さないので写真を撮れなかったのが心残りだ。
ちなみに魚じゃないけどスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)やアフリカマイマイも見つけた。
ティラピア、アメリカンシクリッド、グッピー、プレコ、アフリカマイマイ…。
こうしてみるとバンコクの外来種事情は沖縄本島のそれにそっくりであることが分かる。
ただし、これはほんの数日の散策で得られた結果にすぎない。
噂ではバラマンディやらガーパイク類やら、もっとろくでもないものもこのタイには居着いているそうだ。
さすが熱帯というべきか。沖縄に負けず劣らず事態は深刻かもしれない。
次回タイを訪れる際はバンコクの川はもちろんだが他の地域の実情もしっかりと見て回りたいものだ。
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