2015年6月30日火曜日

セミナーやります

もう一つのブログとまったく同じ内容で恐縮ですが、告知です。

来る2015年7月14日(火)に東京ミッドタウンンにて開催されるスルガ銀行d-laboのセミナーで講師を務めさせていただきます。

テーマは「舌で知る外来生物問題」。
これまで外来生物を探して、捕まえて、調理して、試食した経験から学んだことをお話しします。


テーマこそ重そうに見えるかもしれませんが、気軽に楽しめる講演になるはずです。
みなさまどうぞお越しください。

詳細はこちら

2015年5月10日日曜日

なぜチャネルキャットフィッシュ釣りに練り餌やレバーが使われるか

ウナギやナマズなど肉食性の強い淡水魚を捕らえる場合、餌を用いて釣り上げることが多い。

生きた餌しか追わないタイプの魚を除くと、特に魚肉(特にサバなどの青魚)が効果的である。

海でも川でも対肉食魚の万能餌となるサバの切り身。青魚特有の脂とにおいの強さが肝。チャネルキャットフィッシュにも非常に効果が高い。

畜肉・鶏肉、あるいは練り餌でも釣れないことはないのだが、使用するケースは稀と言える。
やはり、匂いが魚肉やミミズほど彼らの食欲に訴求しないようだ。

しかし、主に動物質のエサを食う(厳密には雑食性だが)チャネルキャットフィッシュを対象とした遊漁では日本においても原産地のアメリカにおいても、牛や豚、鶏のレバーあついはパテ状の練り餌が好んで使用されている。

霞ケ浦にて、豚レバーで釣り上げられたチャネルキャットフィッシュ


チャネルキャットフィッシュ用の練り餌。なんとチーズ風味。頭にくるほど臭い。オクラホマのガソリンスタンドにて。

なぜおとなしく青魚を使わないのか。
サーモンでもいい。イカでもいい。
なぜわざわざレバーなのか。
練り餌に至っては釣具屋に行かないと買えないんだから入手が面倒くさいだろうが。

不思議というか納得いかなかったのだが、昨年オクラホマ~テキサスを訪れてようやくその理由が分かった。
アメリカの内陸部では鮮魚が買えないのだ。
ウォルマートのような大型スーパーにも日本で言うところの「鮮魚コーナー」は無い。
「鮮魚店」なんてものは概念すらもぞんざいしないのではないか。
肉と野菜は専門の売り場があり、品数もそこそこ揃っているのに生の魚はまったくと言っていいほど無い。

ウォルマートの生鮮食品売り場。野菜と肉はあるのに、鮮魚は皆無。もっと家庭でテリヤキやシオヤキを食べなさいよアメリカ人。

冷凍食品コーナーにチンするだけ、あるいは揚げるだけで召し上がれますよという調味済みのタラ料理がほんの少しあるだけだ。
これはちょっとキャットフィッシュの餌には色々な点で適さない。

しかし、生レバーは精肉コーナーで入手可能だ。
チャネルキャットフィッシュの採餌は嗅覚に頼る部分が大きいので、血を多く含んだレバーはその匂いを水中に広く拡散するらしい。

実際に試してみると、なるほど青魚には及ばないまでも集魚力は高く、針からも脱落しづらい。
なかなか優秀な餌だった。

確かに、日本でも精肉加工場の排水周りはウナギ釣りの好ポイントになったりするのでさほど不思議ではないかもしれない。

また、大型スーパーやガソリンスタンド内のアウトドアコーナーの釣り餌売り場には
生の餌が無い代わりに練り餌や塩漬けの小魚が並ぶ。

キャットフィッシュ用だというシャッドと呼ばれる小魚の塩漬け。しかし、なぜよりによって緑に着色したのか…。この辺のセンスもアメリカン。

店員に聞くと、「どれも良く釣れる餌だが、すげえ臭いぜ!」とのこと。
確かに練り餌はチキン、小魚、ブラッド、レバー、チーズ…とフレーバーが豊富で、そのどれもが開封前からほのかに悪臭を放っている。

要は臭けりゃ臭いほどよく、もっと言えば臭けりゃどんな餌でもとりあえず釣れるのだ。

さすがに効果は魚肉やレバーなどの生餌に劣るだろうが、こうした餌ならいつでも入手できるし扱いやすい。
常温で保存、運搬できるのも雑…じゃなくておおらかなアメリカ人の気質に合っているのかもしれない。
臭いけど。


…アメリカでチャネルキャットフィッシングにレバーや加工餌が多用されるのは、「その方が釣れるから」ではなく
「そもそも新鮮な魚介を入手できないから」という日本では考えられない問題が背景となっていたようだ。

ちなみに、オクラホマでチャネルキャットフィッシュ(とブルーキャットフィッシュ)を釣っていた地元民はストライパーというスズキ科の魚を短冊状の切り身にして、周囲の釣り人に大きく差をつける釣果を上げていた。
どうやら、自身で釣り上げたものを捌いて餌にしたらしい。

やはり、新鮮な生餌が一番ということは現地でも周知の事実ではあるのだろう。

ストライパー。海~純淡水域まで広く分布する魚。

ストライパーで釣れたブルーキャット。霞ケ浦水系にも少数生息していると言うが、実際はどうなのだろうか。

キャットフィッシュはアメリカの内陸部ではフィッシュフライの材料として非常にポピュラーな食材。実際、クセも無くおいしい。


では、なぜ一年中新鮮な魚肉が手に入る日本でもレバーや練り餌(アメリカからの輸入物)が使われているのか。

…これは単純に釣り具業界ひいては釣り人がなんとなくあの「アメリカンスタイル」に倣っているためだと考えられる。
霞ケ浦水系でこの魚を対象とした釣りが流行り出してからまだ日が浅い。
ノウハウは原産国のアメリカに求める他ないため、自然と現地の流儀に従うこととなったのだろう。

そういえば、数年前に茨城の釣具店で「チャネルキャット用練り餌、アメリカから入荷!」というポップの下に割高で陳列されているのを見た時は「この半値でサバかサンマ買えばいいのに…」と思ってしまったものだ。

まあ、先にも書いたように保存が効くなどのメリットはあるが。

あと、チーズ風味だ何だという日本ではありえないセンスの餌で魚を釣るというのは単純に楽しい。
時季と場所さえ選べば、本当に何でも釣れる魚なので色々とエキセントリックな餌を追及するのもいいだろう。

とりあえず、パンの耳、よっちゃんイカ、グミキャンディー、鶏のから揚げ、たこわさで釣れることは個人的に確認している。

2015年4月28日火曜日

タウナギを指で釣ると結構危ない

もう昨年の話になるが、釣り雑誌用に奈良でタウナギを取材した。

二年連続の奈良だが、水田の用水路と小川にしか行かなかった。
丸々二日間、観光など一切せずにひたすらタウナギを追っていた。


…ところで、シーズンさえ外していなければタウナギを釣るのは非常に簡単である。





姿を見つけてしまえばこのように、







ライトの光で照らしながらでも果敢にルアーやエサに食いついてくれるのだ。







難しい点があるとすればただひとつ。
ねぐらとなっている石やコンクリートの隙間から引きずり出すのが意外と大変なことくらいか。

では、なぜそんなに時間を要したか。

…取材の合間にいらんことをして遊んでいたからである。
前年に不完全燃焼で終わった「自分の指を餌にタウナギを釣る」という、何の意味も無いチャレンジを再度実行したのだ。




結果、膨大な時間と試行回数を費やしてミッションコンプリート。

が、この写真を撮影した直後、非常に恐ろしい目に遭う。
タウナギが魚体をねじって釣り糸を巻き込み、指に巻き付いたのだ。


頑丈なPEライン(釣り糸)が指に食い込む。
この時は割と太め(6号)のものを使用していたので大事には至らなかったが、もしこれが1~2号の細いとだったら指の肉が深く切れていたかもしれない。

針のかかりどころによっては、こちらの指にも刺さって目も当てられない光景が展開されたことだろう。

タウナギはウナギやアナゴほどは巻き付く性質が強くないので甘く見ていた。


危険なので、みなさんは決してこの釣り方を真似しないように。
…言われなくてもしないか。


ちなみに、今回も釣り上げたタウナギは美味しくいただいた。
やはりこの魚には中華風の調理が合う。

2015年3月11日水曜日

ハクレンを食べるなら、捕獲するエリアの水質に気をつけましょう


つくば市に住んでいた学生時代、よく利根川でハクレンを釣ってはおかずにしていたものだ。

そして先日、関東へ出向いた際に知人のリクエストによって、またもこの魚を食べることになった。

今回は諸事情により荒川産のハクレンを用いることになったが、
ハクレンは生息する水域によって食味が大きく異なると聞く。

荒川産のハクレン

利根川産の個体は臭みも無く食べやすいのだが、荒川産のものはどうだろうか。

荒川と言っても広いので一概には言えないのだが、少なくとも僕の知るハクレンポイントは水がやや淀んでいて不安を煽ってくれる。

フレンチシェフVS荒川ハクレン

しかもなんと、今回は釣り好きのフレンチシェフも助っ人として同行してくださることに。
これは頼もしい。

北風の吹きすさぶ中、中型の個体をサクッと一匹釣り上げて締め、急いで調理場へと運び込む。

香草漬けにする、あるいは酒や牛乳で洗うなど、あらゆる臭い消しを試みるが…。

さすがはプロの料理人。素晴らしい手際で下拵えをこなしていく。

しかし、問題はそこから。
この荒川ハクレン、利根川産のそれとは比較にならないほど臭みが強い。

考えつく限りの手を尽くして臭み取りを敢行する。
調理法も、高温の油で臭いを消し飛ばすべく初手から通して揚げ物オンリー。

油で揚げても臭みを飛ばしきれない。

…が、駄目。
何をしても泥臭さと青臭さが抜けない。

利根川産のものも皮と身の間に川魚特有の臭みはあったが、皮を引いて酒で洗えば気にならなくなったものだ。

だが、こいつは違う。そんな甘いものじゃない。

しっとりと脂の乗った肉は一見すると非常に美味しそうなのだが、実はこの脂が臭みの元凶であるらしい。
これはどうしようもない。

ミンチにして脂が抜け切るまで洗浄しまくるしかないだろう。
もっとも、そこまですればバラムツやアブラソコムツですらも食えるようになるだろうが。

結局、臭みが残り放題のまま四人がかりで食べきった。

一人、二人ではとても無理だったろうと思う。

10日間くらい泥抜きできれば話も違ってくるのだろうが、相手がハクレンではそれも現実的ではない。

おそらく、もうあのエリアで採れたハクレンを口にする機会はもう二度と無いだろう。
ハクレンを釣って食べる場合、水質の良いポイントを厳選すべし。ということを教訓として学ぶことができた。

…プランクトンフィーダーや泥食み系全般に言えることだろうが。