2013年7月23日火曜日

カミツキガメ (Chelydra serpentina)

爬虫類
原産地:北・中米
捕獲難易度:★★★☆☆

印旛沼水系の川にて。他にも各地で目撃・捕獲、あるいは繁殖の確認がなされている。

メディアで騒がれるほど狂暴じゃない。むしろ臆病でおとなしい。

カミツキガメ。その物騒な名前のイメージが強すぎるのだろう。「人に危害を加える恐ろしい外来種」という認識を持っている方が多い。
そりゃあちょっかいを出せば咬むなりひっかくなりされるかもしれないが、そんなのは野生の動物なら当然のこと。向うから積極的に攻撃してこないだけ安心というものだ。

…とはいうものの、子どもの遊び場でもある街中の水辺にこんなカメがいるというのはやはりちょっと心配でもある。
子どもは変なものにはちょっかいを出さずにはいられない生き物なのだから。



よく言われるように「咬まれれば指が一瞬で切断される」なんてことはそうそうないだろうが、体重10㎏に迫る成体に咬まれれば骨に達する大怪我をしてもおかしくない。

とまあまったく無害と言い切れない程度には危険なカメである。捕獲の際には注意を払いたい。

しかし捕獲と言っても前述の通り、とても臆病で警戒心が強いため、めったなことでは人の前には姿を現さない。なので網や手づかみで捕獲するのは極めて困難である。

印旛沼水系では産卵期である6月は陸に上がることも比較的多いらしく、地元の方々の目撃情報はその時期に集中していた。

となると必然的にエサを使用しておびき寄せる方法になるが、よく駆除で使用されるカニカゴタイプのトラップは設置に許可が必要な場合が多いし、駆除を行う業者や役所を混乱させかねないので安易に使用してはならない。
数をたくさん仕掛けないと効率も悪いし、カメを狙う場合はトラップ内での窒息をふせぐ工夫が必要となるため設置に手間もかかる。諸々の理由で個人が用いるのは現実的ではない。

となると「またかよ…。」と言われそうだが、残る手段は釣りとなる。
仕掛けは竿、釣り糸、オモリ、ハリと非常にシンプルでよい。いわゆるぶっこみ仕掛けである。
ただし、一つ重要な注意点としてハリのサイズがある。かなり大きなものを使用するべきである。

小さいハリを使うと、他種のカメがハリを飲んだ状態で釣れてしまうことがある。この事態は避けたい。

カメを狙うわけだから、当然スッポンやらクサガメやら招かざるカメも寄ってくる。
カメというのは魚と違ってエサを水中でひったくって泳ぐことなくその場で食む。
すると釣り人がアタリに気付く前にハリごとエサを飲み込んでしまい、非常に心が痛む事態を迎えることとなる。

それを避けるためにも、やや大げさに思えるほど大きなハリを使うべきである。
カミツキガメは甲長に比して頭部及び口がとても大きい。その上貪欲で、魚のように細かいことは気にしないようなので、「こんなにデカいハリ咥えてくれるかな…」と案じる必要はない。
それよりもうっかり飲み込まれた場合の絶望を恐れるべきだ。

成体の口はかなり大きい。クエ用やマグロ用などの極端に大きなものでなければたいていどんな釣り鈎でも入ってしまう。

具体的言うと、最低でも五百円玉からはみ出す程度のシルエットでないと、かなり飲まれるリスクが高い。特に成体のミシシッピアカミミガメ (Trachemys scripta)に。タマン鈎の22号を飲まれかけたときはさすがに驚いた…。

かといって海釣りで使うような軸の太いものもあまり都合がよくないので、ブラックバス用のワームフックの#5~6あたりが意外と使いやすいかもしれない(試したことないけど…)。

裏返すと見慣れたヌマガメとの身体構造の差は歴然。

エサはサンマの切り身がベスト。次点がサバ。海川陸を問わず、死肉をあさるタイプの生き物には臭い青魚がテキメンに効く。水棲カメ全般の好物でもある。
白身魚と比べると驚くほど差が出る。

イカの塩辛を用いたこともあるが、こちらには反応が薄かった。代わりに印旛沼水系ではアメリカナマズ (Ictalurus punctatus)がやたら食いついてきた。

ちなみに尻尾が怪獣っぽくてかっこいい。

魚と違って泳ぎは得意でないので、ハリにかけてから岸へ寄せるまではそう大変でない。
問題は岸についてからである。

意外と素早い上、踏ん張る力が強い。「ああ、やっぱり爬虫類は陸の生き物だ…。」と思い知らされる。
陸で強引に動きを封じるためにも、釣竿と釣り糸はある程度頑丈なものを用意し、ハリをはずす際にはフィッシュグリップ(写真で使用しているような器具)で顎をつかむのがよい。ペンチも必須。

拘束するためにはやはりフィッシュグリップが無難である。甲羅をつかむのには慣れが必要である。
たとえかみつかれない位置を持ったとしても、足でひっかかれるとかなり痛い。最悪、尻尾をつかんでぶら下げてしまえば咬みつかれることもひっかかれることもないが、カミツキガメが自重で尾やその付け根を脱臼してしまう可能性がある。


ちなみに余談ですが


 食べても美味いです。





セアカゴケグモ (Latrodectus hasseltii)

クモ目ヒメグモ科
原産地:オーストラリア
捕獲難易度★★★☆☆



もう15年以上経つだろうか。「外国からやってきた毒グモが大阪で大量発生!!」というニュースが駆け巡り、全国を震撼させた。

それがこのセアカゴケグモ (Latrodectus hasseltii)なのだが、現在はめっきり影が薄くなってしまった。

駆除に成功し、姿を消したのか?
そんなことはない。むしろ分布を関西から他地域へとどんどん広げつつあるのが現状だ。
おおげさな報道から受けるイメージに比してあまり毒性が強くないことと、おとなしい性質ゆえに被害が少なかったために存在感が薄れたようだ。
あとマスコミも飽きたのだろう。

ベンチの下とか側溝の蓋の裏とか、人工物の陰に多い。

2年ほど前に本種を探して大阪を訪ねた。もちろん大阪ならどこにでもいるというわけではなく、特定の地域に集中的に分布している。

ただし、いるところには本当に掃いて捨てるほどたくさんいた。卵の詰まった袋(卵のう)を守る雌の姿も多く見られた。

セアカゴケグモの卵のうのカラ



大きなメスは足を広げると硬貨大にもなる。


若い個体(亜成体)は腹部の模様がちょっと違う。


捕獲の際は咬まれないよう当然注意を払わなければならないが、特別な機材も必要無いし、逃げ足も遅いので簡単。


ただし人通りの多い街中で地べたを這いずり回らなければならないので、その気恥ずかしさを汲んで難易度は★3つとしておく。

本種も特定外来種であるので生かしたままの輸送や飼育は厳禁。
捕獲の必要に迫られう機会もそうそうないだろうし、危険性を考慮してもむやみに捕獲はせず、観察だけにとどめるのが無難だろう。

2013年7月21日日曜日

ハクレン (Hypophthalmichthys molitrix)

魚類
原産地:中国
捕獲難易度:★★★☆☆

英名はシルバーカープ

ハクレンとはソウギョ (Ctenopharyngodon idellus)、アオウオ (Mylopharyngodon piceus)、コクレン ()と並んで中国四大家魚(それぞれの食性の違いを利用したシステムで同時・同所的に養殖できる、中国における重要な4水産魚種)に数えられるコイ科魚類である。

他の四大家魚と同じく産卵から孵化までに長い流程を要し、日本では今のところ利根川水系でのみ再生産が確認されている。


もともと食用目的で導入された魚なので、皮を除くなどしてちゃんと料理してやればそれなりに美味い。
全長が1mを越え、泳ぎに長けるため、漁師さんでもない限り捕獲方法としては釣りが最も現実的だ。


プランクトンを濾しとる鰓が発達している。

ただしこの魚の食べ物は植物プランクトン。なのでミミズやエビでは釣れない。
だからと言って植物プランクトンを釣り鈎に刺すわけにもいかないので、代用としてマッシュポテトの団子を用いる。
水中で溶け出して拡散する植物質なので疑似植物プランクトンとして成立するのだろう。

だがこのマッシュポテト、もともとはヘラブナ釣り用に用いられていたエサなのでいまいちハクレンにはベストマッチではないように思える。

タイでは釣り堀でのメコンオオナマズ釣りが盛んなのだが、このナマズが食性も外見もハクレンによく似ている。

メコンオオナマズ。下の方に付いた眼も筋肉質な体型もハクレンに似ている。やはり植物プランクトン食。

この魚を狙う際は米ぬかで作った大きな団子を使うが、これはハクレンにも応用できそうだなと考えている。マッシュポテトよりは向いていそうだ。

米ぬか団子の中に釣り鈎を仕込み、メコンオオナマズに溶け出す米ぬかと一緒に吸い込ませる仕組み。

バスやスズキを狙う釣り人のルアーに頻繁に引っかかってしまう。

ちなみに、利根川の釣り人曰く、「マッシュポテトでちまちま釣るより、スズキ狙いでルアー投げてれば嫌になるほど掛かってくる。」とのこと。
試してみるとまさにその通りでした…。

それから利根川水系において、この魚には禁漁期が設けられているので注意が必要だ。



ちなみにこのハクレン、「泳ぐろ過機」として水質浄化目的で導入された北米でも大量に定着しており、一部河川では批判の声も大きいボウ・フィッシングのターゲットにもなっている。
(レジャーと駆除を兼ねる。という大義名分はあるようだが、食用としない魚を問答無用で殺傷するのはやはりよく思わない人も多い)

こちらはそれなりに強力な洋弓で射る遊漁なので、日本では真似しようと思ってもできない遊漁だ。
挑戦したいとも思えないが…。

2013年7月18日木曜日

イッカククモガニ (Pyromaia tuberculata)

甲殻類
原産地:太平洋沿岸(カリフォルニア~コロンビア)
捕獲難易度:★★☆☆☆

クモガニ。
ボディーは小ぶりで足が長い。
シルエットがクモっぽいからクモガニ。

有名どころかつ大物だと世界最大のカニであるタカアシガ二もクモガニ科に属すが、(ちなみにズワイガニもかつてはクモガニ科に分類されていた。)
基本的にこの辺りのグループに属すカニは地味で小型で無名である。

だが、地味で小型でありながら、近年じわじわと有名になってきているクモガニがいる。
イッカククモガニ (Pyromaia tuberculata)だ。


確かに遠目に見るとクモっぽいかな?

元はアメリカ大陸の太平洋岸にしか生息していなかったカニなのだが、船舶のバラスト水に混ざり込んだ幼生(カニの子ども。カニやエビは卵から生まれてしばらくはプランクトンとして水中を漂っている。)が東アジアや南米諸国に運ばれ、分布を広げてしまっている。

日本でも仙台湾、東京湾、大阪湾などの大きな内湾をはじめ、複数箇所で定着が確認されている。

写真の個体は東京湾奥部の河口域で得たもの。

イッカクの名の通り、額(?)が角のように突き出している。

このカニはとにかくおとなしい。
普通カニと言えば捕まえられると必死になってハサミで攻撃してくるものだが、イッカククモガニはほぼ無抵抗である。
見つけた時は死んでいるのかと思ったほどだ。

在来の生物や生態系に悪さをする可能性も高くはないようだ(だからといって侵入を看過してもよいということはないが)。

いじくりまわそうがひっくり返そうがほとんど抵抗しない。あ、こいつ♂だね。

よくこんなんで生き延びていられるなと思ったが、調べてみると確かにこのカニは外敵からの捕食圧に弱く、カニを食べる大きな生き物が多く暮す、酸素や水質に恵まれた水域では繁栄できないようだ。

ということは、このイッカククモガニが繁殖・定着している場所は簡単に言えば環境があまり良くないということである

では日本の多くの海域へこのカニが分布を広げているということはつまり……。

よく見るとピノキオっぽくてかわいい。

見つけ方・捕まえ方は簡単。
生息地へ行き、潮干狩りが出来そうな砂利・砂泥地を探す。
あとは干潮時に足首やスネあたりまで浸かりながら水底や石の裏を探ればよい。
ついでに他のカニやらハゼ類やらいろいろ見つけられて楽しい。

一度見つけてしまえばこっちのもの。のろのろ逃げようとするところを手なり網なりで無造作に掬い上げるだけである。


2013年7月17日水曜日

タイ・バンコクの外来魚

よその地域から入り込んだ生物、いわゆる外来種が定着するっていう事態は日本に限って起きているわけではない。
物資の、人の出入りがあれば世界中のどこでだって生じうる問題である。

今日は数か月前に訪れたタイ国の首都バンコクで見かけた外来種、特に淡水魚類について少々。

この度のタイ旅行は川魚の観察が第一の目的だったので、必然的水辺にいることが多かった。

そのおかげで超大型の淡水エイであるプラークラベーン(Himantura chaophraya)やキノボリウオ(Anabas testudineus)など、憧れの魚たちと次々に対面を果たしていく中で「なんでお前がここにいるのさ…」という面々にも遭遇してしまった。

まずはこいつ。

ナイルティラピア…かな?

シクリッドの一種、ティラピア。タイではプラー・ニンと呼ばれる。

アフリカ原産の魚なのだが、美味しくて丈夫で養殖しやすいということで今や世界中の温~熱帯域に持ち込まれ、野生化している。

日本でも沖縄の各河川と湖沼、それから大分はじめ各地の温泉地や温排水の注ぐ河川に定着して問題となっている。

ただ、川魚を食べる文化が根強いタイでは日本と違って歓迎されており養殖池も多く、なぜか釣り堀にも導入されている。
上の写真もバンコクの釣り堀で釣り人が釣り上げたものだ。

原産地に近い温暖な気候ゆえ、もう本当にあちこちの水辺にいる。日本でいうブルーギルLepomis macrochirus以上にありふれているかもしれない。

実際何度か食べてみたが、確かに東南アジアで獲れる魚のなかではかなり美味い方だろう。

ティラピアに続いてはこれ

ええっ!

ふ、フラワーホーン!?
もしくはその元となったCichlasoma trimaculatum ?

僕はシクリッドのには詳しくないのだが(シクリッドやサンフィッシュは姿形が整いすぎていて苦手)、
これはどう見てもアメリカン・シクリッド。
アジアにいるはずのない魚だ。

しかもカラーバリエーション豊富。

タイをはじめ東南アジア諸国では、フラワーホーンはアジアアロワナ(Scleropages formosus)についで縁起の良い鑑賞魚として非常に人気が高い。
なのでフラワーホーンやその原種が野生化していてもそう不思議ではないのだが、前情報を持っていなかったので流石に少し驚いた。

観賞魚と言えばこの魚も


観賞魚の代表、グッピー。

小さな水路から公園の池まで、ティラピア同様色々なところで見かけた。
飼育が容易すぎてバンバン増える魚なので、日本では遺棄されがちだが、それはタイでも同じということだろうか。

もう一発観賞魚。

 (注:これは沖縄本島産の個体)

プレコ。耳に馴染まぬ和名で言えばマダラロリカリア(Liposarcus disjunctivus)という南米原産のナマズである。
別種のプレコである可能性も無きにしも非ずだが、分布の現状を考えるとほぼ間違いなくこれであろう。

こいつらはバックパッカーの聖地として有名なカオサンロードからチャオプラヤ川に注ぐ水路に多かった。
水が濁りすぎていたのと、水面になかなか姿を現さないので写真を撮れなかったのが心残りだ。

ちなみに魚じゃないけどスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)やアフリカマイマイも見つけた。

ティラピア、アメリカンシクリッド、グッピー、プレコ、アフリカマイマイ…。
こうしてみるとバンコクの外来種事情は沖縄本島のそれにそっくりであることが分かる。

ただし、これはほんの数日の散策で得られた結果にすぎない。
噂ではバラマンディやらガーパイク類やら、もっとろくでもないものもこのタイには居着いているそうだ。
さすが熱帯というべきか。沖縄に負けず劣らず事態は深刻かもしれない。

次回タイを訪れる際はバンコクの川はもちろんだが他の地域の実情もしっかりと見て回りたいものだ。

ブルーギル (Lepomis macrochirus)

魚類
原産地:北米
捕獲難易度:★☆☆☆☆

ブラックバスことオオクチバス (Micropterus salmoides)の話をしたならこっちにも触れなきゃいかんでしょう。

同じくサンフィッシュ科のブルーギル。

バスが1920年代に日本国内に導入されたのに対し、ブルーギルが持ち込まれたのは1960年代とやや新顔。
こちらは成長は遅いわサイズは小さいわで食用としてもゲームフィッシュとしてもあまり歓迎されなかったようだ。この辺りはバスと少々事情が違う。

しかし、バスフィッシングブームに伴い「バスの餌に…」とブラックバスとセットで各地に放流されまくり、持ち前のタフさで今ではバスが定着できない池にもバッチリ居着いた。
その結果、メインで放流されていたはずのブラックバス以上にどこにでもいる外来魚となった。

池や川をのぞいてブルーギルの姿が見えると本当にがっかりする。

めちゃくちゃ簡単に釣れる魚でもある。

捕獲はやはり釣りが最も簡単な方法だが、図太い神経に加えてかなりの悪食であるため、ハリのサイズにさえ気を使えばエサは何を使ってもいい。

エサじゃなくてもいい。毛鉤やルアーのような疑似餌でも呆れるほど簡単に釣れるし、初心な幼魚ならメッキが施されたハリだけでも好奇心からかバシバシ食ってくる。
僕が子どものころは消しゴムのかけらやチューインガムで釣って遊んでいた。
これから釣りを始めたいという人や子どもの遊び相手としてはなかなか優秀かもしれない。
ちょっと複雑な思いもあるけれど…。

ちなみに

食べても

そこそこイケる。

原産地では食用とされているだけあって、正しく調理すれば十分に食べられる味である。
ただし、似た者同士であるバスに比べると小骨が多く身が少ない上、明らかに味は落ちる。

余談だが、僕は少年時代、山の上の澄んだ池でバスやギルを釣っては持ち帰り、晩のおかずにしていた。

その際に気付いたのだが、ブルーギルの中には少し鮮度が落ちてくるとスイカのような青臭さを放つものがある。
といってもアユのそれのように爽やかなものではない。魚の生臭さとスイカの甘ったるい青臭さが混じった、えづくような嫌な臭いである。
バスではそんなことは無かったので、これは植物質も積極的に摂るブルーギルの食性ゆえの現象なのだろう。

ちなみにブルーギルの「ギル」とは鰓のこと。
鰓蓋の後端が紺色に染まることからきている。
(ブラックバスの「バス」は海産淡水産問わずスズキ目の一部の魚を指す雑な総称のこと。)

名前と体型が全然違うので誤解されがちだが、ブルーギルとブラックバスはどちらも同じサンフィッシュ科に属す魚である。

2013年7月16日火曜日

オオクチバス(ブラックバス) (Micropterus salmoides)

魚類
原産地:北米
捕獲難易度:★★☆☆☆

実は食べてもうまい。

オオクチバス。より馴染みのある名で呼べばブラックバス。今更語るにも及ばない外来種の代表格。

三度のバス釣りブームに乗ってすさまじい勢いで各地へ拡散して定着し、その適応力、繁殖力、そして食性から元来の生態系への影響が懸念されている。

バスに限らず、生態系に大きな悪影響を与える外来種なんてたくさんいるんだけど、知名度、容姿、名前の響きなどなど色々な面でキャッチーだったのだろう。
外来種問題について語るうえで今も昔もとりあえず例に挙げられがちだ。

もう20年近く前、僕が小学生だった頃も社会科の授業で「琵琶湖でブラックバスが増えて小魚やエビが減ってるよ!」と習った。

ウグイ釣りをしていてもバスの子どもが釣れてしまう時代。
小魚を食べるばかりでなく、小魚のエサを奪う存在でもある。

ちなみに前後して「琵琶湖は合成洗剤のせいで富栄養化がひどい」という内容も教えられていたので、当時の僕は「琵琶湖ってヤバいとこなんだな…。」と思っていた。

そんな教育、報道のおかげか、今はかなり「バス=悪」という認識が広まっているようで、特定外来種認定や駆除の積極化がなされている。
バスフィッシングのマナーとされていたキャッチ&リリースを禁止する湖も増えているようだ。

そういえば釣り番組でもバスフィッシング特集の回ではリリースシーンが映されることは無くなったようだ。
以前は出演者が声を掛けながら、感動的な演出の下でバスが湖に帰っていく様子が確実に放送されていたものだが。

世論はブラックバス徹底駆除の方針に大きく傾いているが、バスフィッシングは(下火とはいえ)もはや一つの産業。
ブラックバスのおかげで収入を得られている人も多く、問題は複雑になっている。

バスと言えばルアーフィッシング!ってイメージだけど…

で、そういうバス釣りだが、キャッチ&リリースに限らずさまざまな暗黙のルールが存在する。
その中でも最たるは「バスはルアー(疑似餌)で釣る魚。エサを使うのは邪道。」というものだ。

(ちなみに最近は味と臭いが付いたルアーなんてのも多く出回っている。そこまでするならもうエサ使えばいいじゃん…。と思うのだが。)

もともとルアーフィッシングのターゲットとして人気を得た魚なのだから当然と言えば当然なのだが、もし人気の釣り場でミミズなどのエサを使って釣りをしようものなら、周囲のバス愛好家にかなり嫌な顔をされる。
時にはチンピラに絡まれたり石を投げられることもあるとか…。

まあこれは草野球の大会にプロの球団がエントリーするようなもので、確かにかなり空気が読めていない行動ではある。

そういう場所では自身のためにもエサ釣りは避けた方が無難だが、エサを使うと簡単確実に面白いほどよく釣れてしまうのだ。

僕はそういうバスフィッシング自体には興味が無いので、ブラックバスが必要なとき(研究材料として、あるいは食材として)は人のいない水辺でエサを使って釣る。
多分これが投網と並んで効率的、合理的な捕獲方法だろう。

うぶなバスはルアーでも簡単に釣れるのだが、アクセスの良い水辺にいるバスは過去にさんざん釣られており、ルアーを見切ってしまう。
そんな魚は1日粘っても1尾も釣れなかったりするのだが、本物のエサを使えばあっけないほど簡単に釣れる。

エサは生きていればなんでもいい。小さなバスでもOK。

捕獲難易度★二つと表記したのは「エサ釣りなら楽勝!」という要素を多分に含んでいる。
もしこれが「霞ヶ浦でエサ釣り禁止!」という条件下であれば、一気に★4つくらいに難易度が跳ね上がると思う。
それほど、フィールドの選択とエサの使用は重要なファクターなのだ。単に捕獲だけを目的とするのなら。

ちなみに使うエサはとにかく生きていてよく動くものならなんでもいい。ミミズでも子ザリガニでも、なんなら小さなブラックバスやブルーギル(Lepomis macrochirus)でもいい。
しかし、魚の切り身など動かないエサにはとことん反応しないので注意。

実は食べても美味い。

なお、ブラックバスは日本の川魚のなかではかなり美味しい魚である。
もう害魚としての悪評が広まりすぎてしまったので、今後食材として定着することはないと思うが、スズキに似た淡白な味わいで身も多い。

場所によっては皮に臭みがある場合もあるので、調理の際に皮を引くと良い。
下ごしらえとして身を一旦牛乳に浸すのも効果的だが、何よりてっとり早く確実なのは、水のきれいな場所で捕まえることだ。

※オオクチバスは特定外来種に指定されており、生かした状態での運搬は禁止されています。食用とする場合は捕獲したその場で〆るようにしましょう。

2013年7月15日月曜日

ミシシッピアカミミガメ (Trachemys scripta)

爬虫類
原産地:アメリカ合衆国
捕獲難易度:★★☆☆☆

小さな頃は可愛いかったのに…。

「ミドリガメはおとなになると茶色く、大きく、かわいくなくなる。」

これは小学校理科の授業で必修にすべき事柄だと思う。

確かにアカミミガメ類の幼体はとてもかわいい。
丈夫で育てやすいというし飼いたくなるのもわかる。

だがそれがトラップ。
うっかり衝動買いでもしようものなら、

かわいい!→丈夫!すくすく育つ→すくすく育ちすぎる→あれ?どうしよう…。→殺すには忍びないので、近所の川や池に捨てる。→丈夫!野外でもどんどん増える!

の流れでどんどん野良アカミミガメが増えていく。

おかげで今や日本中の河川・湖沼で一番目につきやすいカメになってしまった。

これくらいなら…

まだ可愛いんだけど…。


すぐにこうなることを覚悟しておかないと。

水の汚れにも強いので、隠れ家と水量があればたいていどんなドブ川でも観察することが出来る。

何でもかんでも貪欲に食べるので、魚釣りをしているとハリに掛ってしまうことも。
ミシシッピアカミミガメに限らず、水棲のカメはハリをすぐ飲み込んでしまうので、カメの多い場所で釣りをする時はよくよく注意したい。

捕獲方法は小さな個体ならタモ網でも掬える場合があるが、警戒心の強い大型個体はエサでおびき寄せるトラップか釣りが確実。
(トラップを使用する場合は各漁協に設置可否の確認を。)

さすがに手づかみはちょっと難しいので捕獲難易度は☆二つかな。

でもこれぐらい人に慣れてれば手づかみもOK!

足下で餌をねだるアカミミガメの大群(大阪府にて)

餌付けされているのか、住宅街付近では人間を怖がるどころか積極的によってくるアカミミガメもたまに見かける。
池のコイのようだ。

手づかみと書いたが、カメはくちばしと爪が意外と鋭い。捕まえる際は十分に注意したい。
また、これはカメに限ったことではないが、野生動物の体は雑菌の温床となりがち。
触った後は念入りに手を洗おう。

カワヒバリガイ Limnoperna fortunei

二枚貝
原産地:中国中南部
捕獲難易度:★☆☆☆☆

純淡水域でイガイ類が採れるという違和感

数年前、堤防や岸壁にうじゃうじゃひしめき合っているイガイの仲間が淡水にもいると聞いたときは驚いた。
名はカワヒバリガイ (Limnoperna fortunei)といい、中国原産らしい。

それと同時に「じゃあムール貝(ムラサキイガイ)にも近縁ってことだから美味いのかな?」と思い立ち、採集計画を練った。
色々あって決行は去年2012年になってしまったが…。

向かったのは琵琶湖水系である宇治川。想像以上に流れの速い川だった。
海のイガイ同様、基物にくっつくタイプの貝らしいので激流は苦手だろうと淀みを探して覗き込むと即発見!しかも大量に。超簡単にほぼミッションコンプリート。

計画なんて練る必要なかったのだ。机であれこれ考える前にさっさと行動しておけばよかったのだ。

強い糸状の繊維(足糸という)でコンクリートにへばりついているので、素手で引き剥がすのにはなかなか力が必要だが、絶対動かないし数が多いのでまず失敗はない。
それこそイガイ捕り器でもあれば無限に収穫できそうだった。
今までで一番捕獲難易度の低い外来種かも…。

ものの数分でこれだけ採れる。

護岸の窪みなどに数個~数十個体が固まって生息していた。

この集団化する生態が厄介で、ダムや水道、水力発電所の配管内でコロニーを形成して管を詰まらせ、施設の機能を阻害してしまうのだという。
地味で無害に見えてなかなか直接的に人間の生活に影響を与える外来種だ。

カワヒバリガイは現在、シジミなどの輸入資材に紛れて東アジアを中心に各地へ分布を広げている。
遠くは南米でも問題になりつつあるとか…。


食べてみる


さて、当初の目的通り味見をしてみよう。

ただしこの貝は特定外来種であるため生かしたままは運搬できない。
採集したら、面倒だがその場で〆てから持ち帰る。


見た目はかなり美味しそう。

炒めると殻が開き、黄色い身が覗く。
やはりムール貝を彷彿とさせてなかなか食欲をそそられる。

が、食用とするにあたって一つ残念な点がある。


小さいのだ。
シジミよりもはるかにボリュームに欠ける。
殻の長さが3㎝ほどになるものもいるそうだが、この日僕が撮ったものの中にそんな大物はいなかった。せいぜいが2㎝程度である。

これでは食いでがない。爪楊枝でほじくってちびちび食べるのか。


上がムール貝、下がカワヒバリガイ。

だがちょっと待て。
小さい分味が濃厚で美味しいのかもしれない。シジミも小さいけど味は良いし。
とりあえず試してみようではないか。


…。

味、無い。

決して不味くはないが、決して美味くもない。
当然だ、それを判断するための味がほとんどないのだから。

噛みしめ続けていると、ふとした瞬間に二枚貝特有のうまみをうっすらと感じることもあるが、
舌と鼻腔に全神経を集中していないとわからない程度だ。

1時間噛み続けたガムからミントの香りを感じ取ろうとするような虚しさがある。

食材として成立させるには、それこそ大量に採集し、常識はずれな量をスープやみそ汁のたねとして投入、質より量の作戦で出汁を取るしかあるまい。

採集前から薄々気づいてはいたけれど、これでは「食べて駆除」なんて呑気なことは言ってられそうもない。
もっと積極的な、駆逐自体を目的とした駆除と防除が必要だろう。