2014年12月2日火曜日

セアカゴケグモに咬まれた -症状と経過のメモ-

セアカゴケグモ咬まれたので、その症状について簡単に書き留めておきます。



当初、この件をブログ等で下手に公開するのはちょっとどうなのかなと考えていました。
ですが実際に咬まれてみて、これは日本語による具体的な症例の解説を現状より一つでも多く残して周知に貢献すべきだと思い至り、公開することにしました。

というのも、このセアカゴケグモによる咬症が
日本人が想定する一般的な「毒虫による虫刺され」の症状からあまりにかけ離れていたためです。

簡潔に述べると、まず「咬まれた瞬間はほぼ無痛」であり、「自覚症状が咬まれてから時間を置いて」、「咬み跡からやや離れた部位に」、「疼痛や麻痺という特殊な形で現れ」、その後「時間の経過とともに患部が拡大してく」のです。

ということはつまり、もし野外作業中などにセアカゴケグモに咬まれてしまったとすると、即時の痛みは軽微であるため、咬まれた際にはクモの存在には気が付けないかもしれません。
その場合、症状を自覚する頃には犯人いや犯蜘蛛は遠くへ逃げ去っている可能性が出てきます。

しかも、症状はとても虫刺されとは思えないタイプの痛みや痺れとして知覚されます。

姿も見ないまま、毒虫を連想することのできない症状が突然出てきたとなると、「これはどうやらセアカゴケグモにやら
れたな!」と推察することはなかなか困難でしょう。

症状が軽い場合でも、体の一部へ唐突に原因不明の痺れや痛みが出てくると、治まるまでは不安で仕方ないでしょう。
万が一症状が重く、治療が必要になった場合などは、原因がハッキリしていないと適切な処置を即座に受けられない可能性も出てきます。

この子が咬んでくれました。

(実際、原産地のオーストラリアでは乳幼児がセアカゴケグモに咬まれる事故があるようです。
この場合、クモがその場を離れてから痛みで泣きじゃくり、事故の発生が初めて認識されるようなケースが出てきます。
それだと外傷を見つけることも症状を問診することもできないので、クモによる咬症だと断定するのがとても困難になるのだとか。)

そう言った状況に陥るのを防ぐ、あるいは少しでも早く打開するためには、具体的な症状が周知されることこそが第一歩なのではと考えらます(まあ、滅多なことでは咬まれたりしないとは思っていますが…。)

それでは咬まれた当時のメモ(加筆修正済み)を公開していきます。

2014年11月8日(土) 大阪府某所

12:39 
セアカゴケグモに左手人差し指の付け根(手の甲側)を咬まれる。
ほんの僅かにチクリと痛みはしたが、「ん?今のは咬んだのか?」と確信を持てずにいた。
いわゆる「甘噛み」で、毒素はまともに注入できていないのではと。
だが、神経を集中すると確かに軽く痛痒い。
この時点ではまだ赤みや腫れも出ていない。


12:41
1分2分と時が経つごとに、咬み跡がヂリヂリ、ジンジンと痛み始める。ほのかに赤みが出始める。


毒の影響が時間差で出てくるのか!たったあれだけの甘噛み(だとこの時点では思っていた)でこれかよ!?ガッツリ咬まれたら相当痛いのだろうな…と戦慄する(実際はガッツリ咬まれています。)


12:45
左腋が痛み出したような気がする。だが手首や肘には症状出ず。気のせいか?
いや、明らかに痛みだした。腋の方が咬まれた箇所よりも痛い。間違いなく毒の作用だ。甘噛みでよかった(呑気なことに、まだ甘噛みで済んだのだと思い込んでいる)。
こんな毒は初めてだ。痛いが面白い、と感じる。
ハチは刺される際に激痛を伴うが、神経毒は注入時は痛くないのだな、などと考える。

12:56
左腋の痛みが明らかに強まる。これ以上強く痛むと日常動作に支障が出る。これが痛みのピークであってほしい。
などと言っているそばから左胸が痛み出す。少しばかりの危機感を覚える。
また、ここでようやく「あれは断じて甘噛みではなかった」ことを確信する。

12:58
左脇から左胸が腫れぼったく、鈍い痛み。蜂毒や筋肉痛とは異なる疼痛だ。
膝の成長痛がこんな感じだったような気がする。

13:03
また胸と腋の痛みが少し強くなる。だんだん左腕全体に力が入らなくなってきている。
腕全体に鬱血時のような鈍い痛みと痺れを感じる。
明らかに左手の握力が落ちている

13:20
咬み跡の痛みが増した気がする。
手と腕に全然力が入らない。麻痺しているのだ。
まるで左上半身だけが過剰なウェイトトレーニングを一気にこなした後のように脱力している。
もし今魚釣りに臨んだら、さほど大きくない魚でもやりとりするのがかなり苦しいだろう。そこそこのサイズの魚にさえ、簡単に竿を持っていかれてしまうだろうな。などと考える。

13:30
人差し指が痛みだす。
骨がというか神経が痛い感じ。骨の芯だけを打ち身したような…。

13:36
たぶんここが痛みのピークだろう…。そうであってくれ。と、祈る。
(翌日に友人らと大物狙いの釣りに出向く予定だった。)
握力がほとんど無い。拳は握れるが、ペットボトルの蓋は開けられなさそう。

13:52
また少しだけ痛みが強くなった気がする。(どうやらここが痛みのピークだったらしい。)


咬み跡はほんの少し腫れたかなという程度の変化。
なお、これ以上腫れや赤みが増すことはなかった。


14:01
脇の痛みが引き始める。咬み跡から人差し指にかけては依然痛いまま。

14:07
指の痛みも握力もかなり回復。今ならもう多少の大物釣りにも行けそう。

14:23
順調に痛みが引いてはいるが、まだ痛いことは痛い

14:36
現状維持。なんだか、左上半身だけ朝から肉体労働に従事してきたような倦怠感。

15:35
もはや一番気になるのは咬み跡および人差し指に。

15:53
脇と胸の痛みはほぼ消えた。違和感は少しあるかも。手はまだ痛い。いや、やっぱり胸と腋もまだちょい痛い

20:20
手だけまだ痛い(特に噛み跡)。

23:27
布団で横になっていると、脇と胸がまた少し痛みだす。

翌 2014年11月9日
3:00 
噛み跡と指はまだ痛い。なんか痛みのタイプがハチなど普通の毒虫による咬症に近くなったような印象を受ける。

6:00
噛み跡が普通に痛い。ズキズキした痛み。
冷水や氷で冷やすと、その間は楽になる。

11:18
痛みが引いてきた。

16:30
手をグーパーと握ると咬み跡が痛む。

20:00
咬み跡を触ると少し痛い

翌々日 2014年11月10日
09:00
咬み跡を触るとほんの少し痛いが、生活に支障をきたしたりするレベルではない。
ほぼ気にならない程度。

2014年11月19日朝 (咬まれてから11日後)
痛みはまったく無い。完治!
と思いきや、噛み跡周辺の痒みが多少残っている。

2014年12月1日(23日後)
咬み跡を撫でるとまだわずかに痒みを覚える。しつこい!
だがもうさすがに完治したと言っていいだろう。
ただし、咬み跡は未だ(ほんの小さくではあるが)
赤く残っている。


…とまあ一部始終はこんな感じです。

時間が無くなってしまったので、今日のところはこの辺で。
さすがにとっ散らかっているので、今週中に時間を見つけて追記及び整理をします。

それでは一旦失礼します。

2014年9月21日日曜日

「外来魚のレシピ」

この度、外来魚(一部、爬虫類と貝類を含む)に関する書籍が発売されました。


「外来魚のレシピ 捕って、さばいて、食ってみた」

出版元は理工書などで有名な地人書館さん。
縁というのは不思議なもので、学生時代から親しんできたあの「外来種ハンドブック」の担当編集者様からお声をかけていただき、初の書籍出版と相成りました。

基本的な内容は、過去にニフティのデイリーポータルZに掲載された外来魚水生生物の採集・試食記事に加筆修正と二本の書下ろしを加えてまとめたものです。

収録されているのは



(マーブル&アルビノ)ウォーキングキャットフィッシュ


アフリカマイマイ


オオクチバス


ブルーギル


チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)


タウナギ


ソウギョ


ハクレン


カワヒバリガイ


カミツキガメ


カムルチー


モザンビークティラピア(カワスズメ)


アリゲーターガー


マダラロリカリア
の14種。

完全書下ろしはウォーキングキャットフィッシュとアフリカマイマイで、他にもマダラロリカリア(プレコ)の章へは表紙カバーにも載っている丸焼き(香草詰め)を追記しました。
新要素は沖縄ネタばっかりですね…。

Amazonなどのネット書店でも購入できますが、
書下ろしがウケたのか予想を超えた好評をいただいており、現在各所で売り切れ、品切れが相次いでおります…。
間もなく入荷するはずですので、どうかお待ちを。申し訳ございません。

本体価格は2,000円。
外来種問題に関心の無い方もお楽しみいただける内容になっております。
ぜひぜひお手に取っていただけたらと思います。

2014年6月30日月曜日

外来種たちの故郷・米オクラホマ州旅行

友人らに誘われ突発的にアメリカはオクラホマ州とテキサス州へ行ってきました。
主な目的は魚釣り。

オクラホマ、テキサスの淡水域と言えば古代魚をはじめ各種淡水魚とカメの宝庫です。

オオクチバスやチャネルキャットフィッシュ、カミツキガメなど日本でもなじみになってしまっている外来種たちのネイティブな姿を見ることも個人的な楽しみの一つでした。

実際、毎日のように「あっ、お前日本で見たことあるぞ!」な生物に遭遇できました。

初日に立ち寄った釣具店にはバス、チャネルキャット、アリゲーターガーの立派な剥製が。

 

ナマズ釣りの名所らしいある川では地元民が大型のブルーキャットとチャネルキャット を爆釣!
…している隣で小ぶりなチャネルキャットの幼魚をゲット。
自然下で出会えると素直にうれしいですね。

同じ河川ではミシシッピアカミミガメにも遭遇。
「アカミミだ!」と思って近寄るとリバークーターやチズガメだったというケースも多数。
さすがオクラホマ。

カメと言えばカミツキガメにも遭遇。
「ここカミツキガメいそうだよね~。」と話しながら水辺を歩いていると本当に泳いでいるのが見えて驚愕しました。そのそばには産卵床を守るバスの姿も…。
写真は僕が帰国した後、現地に残った友人が捕獲した個体。


昼食をとったチャイニーズビュッフェではキャットフィッシュ(チャネルとは限らないけど)のフライ や


 茹でたアメリカザリガニが。
キャットフィッシュは美味いがザリガニは…。

意外にもなかなか姿を見せなかったのがブルーギル。
同行者がルアーで釣った個体。

巨大なぬいぐるみも販売されるなど、愛されてます。 

ブルーギルによく似ているけどもっと鮮やかで、鰓の後縁が伸長するロングイヤード・サンフィッシュ。


日本各地で見つかっているスポッテッドガーに、 

アリゲーターガーももちろんネイティブ!

それから…
アライグマも多数目撃。主にD.O.Rで…。
これは悲しいですね。


やはり生物は本来の生息地で、あるべき姿を見るのが気持ちいいですね。
そういえば、現地の人に「これは日本にもいるぞ」と言った時の驚いた表情が印象的でした。

2014年2月21日金曜日

チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ) (Ictalurus punctatus)

魚類
原産地:北米
捕獲難易度:★☆☆☆☆

大きなものだと60㎝を超える。霞ケ浦水系では90cm以上のものも時折捕獲されるという。

アメリカナマズとは
このアメリカナマズ(別名チャネルキャットフィッシュ)も食用目的で日本に持ち込まれたが、
食卓の前に野外に定着してしまった外来魚の一つである。

事実、食材としてのポテンシャルはなかなか高い。
原産地の北米ではポピュラーな食用魚で、フィッシュアンドチップスなどに利用されているようだ。

餌を用いれば簡単に釣れる。ただし、暖かい時季に限る。

日本国内では爆発的に個体数が増加した霞ケ浦水系を中心に分布を拡大しており、何でも食べてしまう食性から在来種への影響が懸念されている。
 

腹を割くと、胃からはウグイやワカサギ、テナガエビといった在来種のほか、ブルーギルやアメリカザリガニなど同郷の外来種まで多様な生物が見出される。

また、ワカサギなどの漁獲対象減少はもちろんであるが、胸鰭の鋭く硬い棘(特に幼魚のものは針のように尖っている)が漁網に絡まって作業効率を著しく低下させるため、霞ケ浦の漁業者らにはオオクチバスやブルーギル以上に忌み嫌われている。

日本のナマズ(マナマズ)との違い
 

左が在来のナマズ(いわゆるマナマズ)、右がアメリカナマズ。こうして並べてみると外見は大きく異なっているのがわかる。

アメリカナマズは遊泳に特化した二叉型の尾鰭と流線型の体型を持つ。あえて在来ナマズで言えば、むしろギギに近い印象を受ける。
一方、マナマズはいかにも底生性といった体型で、各鰭もアメリカナマズに比べると貧弱だ。ちなみに髭の本数も少ない。

捕獲はエサ釣りで

アメリカナマズの捕獲は、霞ケ浦水系に限って言えば非常に容易である。
頑丈な釣り糸にエサを刺した丸セイゴ鈎やチヌ鈎を結んで水底に放り込んでおけば驚くほど簡単に釣れる。
ただし、それも春~秋口にかけての温暖な季節に限った話で、晩秋~冬季はウソのように釣れなくなってしまうので注意が必要だ。

仕掛けは一本鈎の胴突きでもキャロライナリグでもなんでもいい。
河川で狙う場合は仕掛けが流されないよう20~30号程度のオモリを用意しておこう。
逆に、それ以上のオモリでも流されるような急流はアメリカナマズもあまり好まないので、おとなしく釣りやすい淀みを探そう。


サバやサンマの切り身は食いつきも鈎持ちもよく、かつ安価なので利用しやすい。

エサは臭いの強いものならば何でもいいが、集魚効果と入手の容易さを考えるとサバやサンマなど青魚の切り身がおすすめだ。

ちなみに、イカの塩辛やよっちゃんイカ、フライドチキン、果てはグミキャンディーなどコンビニで購入できる食品でも釣果が報告されている
色々試してみても面白いかもしれない。

食べ方

導入の経緯を考えれば当然だが、清浄な環境で捕獲したものは加熱すれば食べることも可能である。

ただし、臭みが強い個体も多いので、皮をひく、牛乳や香草に浸すなど臭い消しの工夫が求められる。

皮と身の間に臭いがたまっている場合が多い。皮は問答無用で取り除いた方が良い。 

川魚の臭みを軽減するためには牛乳に浸すのが常套手段。アメリカナマズにも有効だ。 

調理法はおとなしくフライにしておくのがベスト。
臭みが不安な場合は味付けにカレー粉を使うと、さらに臭いを抑えて食べやすくなるとか。



ちなみに、残念ながらどんなに手を尽くしても臭みがとりきれないツワモノ個体も存在するようだ。
そういうのに当たってしまったら…ご愁傷様である。


そんな魚でも、二週間ほど泥抜きをしてやれば十分美味しく食べられるようになるはずなのだが、
アメリカナマズは特定外来生物に指定されている。
よって無許可での蓄養と活魚の輸送、すなわち家庭での泥抜きはNG。
絶対やらないよう気を付けよう。



2014年1月15日水曜日

コンビクトシクリッド (Amatitlania nigrofasciata)

魚類
原産地:中米
捕獲難易度:★★☆☆☆


コンビクトシクリッド(コンヴィクトシクリッドと表記されることも)は中米原産のいわゆるアメリカンシクリッドの一種である。

安価かつ丈夫で、一時期は観賞魚としてある程度の人気を誇っていた。

過去形で書いたことから察しが付くと思うが、近頃は観賞魚店でもあまり見かけなくなった。

だが、沖縄の限られた水系では未だにその顔を安定して拝めてしまう。
残念ながら。



原種は薄紺の地に暗色の帯が走った特徴的な体色なので、在来の淡水魚と見間違うことはない。


当時まだ十代。沖縄に住み始めたばかりの頃、那覇市内の水路でこの魚を見たときは「海水魚!?」と思ってしまった。

また、さらに初見の者を困惑させる白変個体も一定数存在している。



こちらは「ピンクシクリッド」と呼ばれている。
いかにも観賞魚ルートで侵入しましたいう感じである。

狭い水路であればタモ網で追い込み、広大なポイントであれば投網やもんどりなどのトラップで捕獲できる。

ただし、立ち入りと採集に許可が必要な場所もあるので注意が必要だ。

個体数は基本的にそこまで少なくないが、分布が局所的であることと厳冬後は大きく減少することがネックとなる。


ちなみに僕は捕獲した個体を飼育したことがあるのだが、同居魚を攻撃しまくって手を焼いた。
というか即刻隔離せざるを得なくなった。
観賞魚として人気がなくなった原因もこの辺にあるのかも。