2013年4月26日金曜日

アムールハリネズミ Erinaceus amurensis

哺乳類
原産地:東~北東アジア
捕獲難易度:★★☆☆☆

日本にもいるんだな、これが。

ハリネズミ。姿と名前を知らない人はいないと思うけれど、どこの国に住んでいる生き物かは案外知らない人が多い。

かなり突飛な姿をしているためか、それこそアマゾンやマダガスカルのような秘境に生息していると思っている人も多いようだ(少なくとも僕の周囲では)。

しかし、意外にもその原産地は主にユーラシア大陸で、中国やヨーロッパなど温帯気候に属す地域が多い。
ということは多くの種が日本の気候にも適応しやすいわけで、実際2種のハリネズミが国内に定着している。

そのうちの1種が今回紹介するアムールハリネズミ (Erinaceus amurensis)だ。
別名をマンシュウハリネズミとも言い、その名の通り原産は中国とその周辺である。

確かにかわいい。

もともと日本には愛玩用動物、ペットとして持ち込まれた。
かわいいからね。

でも見た目とは裏腹に、性格というか性質はそんなに可愛いものでもないらしい。
懐かないから愛着が湧かない。夜行性だから寝てる姿しか見られない。雑食だからエサとフンのにおいがキツい…。
などなどの理由で飼育を放棄して野山に捨てる飼い主が多く現れたようだ。

アムールハリネズミに限らず、現在も愛玩用として人気のあるヨツユビハリネズミ(ピグミーヘッジホッグ)などにも同様の不満を抱く飼い主は多いと聞く。
どうやらハリネズミは犬、猫、フェレットのようなコンパニオンアニマルとしては適さないようだ。

どちらかというと両生類や爬虫類を飼うつもりで育てていくべきなのだろう。
見た目のキャッチーさとは裏腹に玄人好みする動物だ。

カメラを向けるとすぐに顔を伏せたり丸まったりするので、この一枚を取るために10分以上道端にへばりついていた。人が来たら間違いなく通報されていたと思う。

で、国内の生息地であるが、現在は静岡県は伊豆高原周辺に定着してしまっている。

数年前にちらりと噂で聞いてからずっと見たいと思っていたのだが、ようやく2012年6月に満を持して伊豆へ出向くことができた。
ただし作れた時間は一晩だけ。夜9時に駅に着き、始発で帰らなければならないというハードスケジュールになってしまった。

信頼できる情報抜きに、外来哺乳類を狙って見つけるのは結構難しい。
ヌートリアのようにうじゃうじゃいるとは思えないし、フラッと出向いて数時間で見つかるものではあるまい。

見つかるまで何度も伊豆に通わなければ…。
と思っていたが、あっさり見つかった。しかも3匹も。

1匹目は道路の端にしれっと転がっていた。

2,3匹目は道路脇の藪で仲良く並んでいた。つがいだったのだろうか?

拍子抜けした。
しかし、日本の道端にハリネズミが転がっているという光景は凄まじいインパクトだった。
ドデカいウニのような姿は存在感と違和感にあふれていた。

2匹目および3匹目は休憩中に近くの藪から「カサカサ…」という小さく落ち葉が擦れる音が聞こえたので覗いたところ、まとめて発見してしまった。
どちらも同じくらいのサイズだったが、アムールハリネズミはつがいで行動するものなのだろうか?

ちなみに、最大の特徴たる針はかなり硬く鋭く、触れると相当痛い。

だが、その防御力に自信があるためか、近づいてもまったく逃げようとしない。
この肝の据わりっぷりは野生の哺乳類としてはかなり珍しい。


手づかみできるよ。ただし皮手袋必須。

しかし藪にいた2頭はまだしも、路上をうろついているヤツはまずい。車に轢かれる。
仕方がないので緊急措置として一旦掴み上げてこちらも藪へ。

外来種とはいえ、D.O.R(Dead On the Road=路上死体)になってしまうと、今度はそれを食べに来た在来の獣や鳥が事故に巻き込まれることが多々あるのだ。
(林道で見つかるカラスや猛禽の轢死体は大体そうして食事中に撥ねられたもの。)

しかし…。手づかみできる哺乳類って日本中探してもそうそういないぞ。
せいぜい、うっかり地表に出てきてしまったモグラくらいか。

そういえば、ハリネズミは「ネズミ」と名が付いているが、げっ歯類ではなくモグラなど食虫類の仲間だ。
一生役に立たない知識だ。

一つ注意してほしいのは、「野良ハリネズミは絶対素手で触らない」という点だ。
僕は潔癖症からは程遠い性分だが、野生の獣の不潔さには敬意(?)を払っている。
うっかり針が手に刺さったら、どんな雑菌を刺し込まれるかわからない。
頑丈な皮手袋を絶対にはめておこう。

「そーっと触るから素手でも大丈夫、大丈夫!」とか思ってるとこうなるぞ。

予想外の行動&力強さに正直かなり焦った。

全身の筋肉をフルに使って、手をがっちりホールドされる。
もしこれが素手だったら流血必至。大惨事になっていただろう。

なお、このアムールハリネズミは特定外来性生物に指定されているので、生かしたまま移動させることはできない。
もちろんペットとして飼ってもダメ。

すごく可愛いけど、持って帰っちゃいけません。

ちなみに神奈川県小田原市にはよく似た「ナミハリネズミ (Erinaceus europaeus)」が定着しているそうだ。
次はそちらを見に行きたいなと思っているので小田原市民の方々、目撃情報などがあればぜひご一報を!!

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