原産地:南米
捕獲難易度・・・★☆☆☆☆
マダラロリカリア、と書いてもピンとくる人は少ないだろう。
だが「プレコ」と称せば、話は違う。
多くのアクアリウムファンがこの特異な形態の魚を思い浮かべるはずだ。
(※プレコとはナマズ目ロリカリア科に属す一部の魚の俗称かつ総称)
マダラロリカリア(Liposarcus disjunctivus)
この魚は日本とは気候の大きく異なる熱帯域のど真ん中、アマゾン水系原産なのだが、
国内でも比較的温暖な沖縄島の各地で定着してしまっている。
先ほどちらっと述べたように、この魚はその奇妙な外見がうけて観賞魚として珍重されている。
(流通名・商品名は単にプレコであったり、ヒポプレコとかサッカープレコとされることもある)
なるほど観賞魚店やペットショップに並ぶ体長数cm程度の幼魚はそれはそれはかわいい。
価格も200円程度からとかなり手が出しやすい。
しかも水槽に生えたコケや他魚の食べ残した餌を掃除してくれるという「まあ一応、間違ってはいない」情報が訴えるようで、観賞魚ビギナーがよくよく調べもせずに購入してしまうケースが多いようだ。
そして、この軽率なお買い物が悲劇の発端となる。
この魚、実はかなり大型になるのである。こんな感じに。
那覇市を流れる安里川にて吸い込み釣りで採集
写真の個体で全長50cm程度。過去に70cm以上の個体を見たこともある。
こうなっては幼魚の頃の愛くるしさは完全になりをひそめる。
不勉強な飼い主(と呼ばれる資格すら無いが)にしてみれば「話が違う!」ということになり、愛情を注げなくなる。
そもそも一般的なサイズのガラス水槽では飼育すること自体が不可能だ。
で、皆決まって持て余す。
缶ビール程度の値段につられて軽いノリで買ってきた魚に、高価な180cm規格の水槽を与えてまで飼い続ける者は稀だ。
里子に出す、殺処分、小さな水槽で無理して飼って死なせるというのはまだましな方である。
「この手で殺すのはあまりにかわいそう。もう我が家では飼ってやれないけど、せめて広い川で元気に暮らして…」という慈悲の心と無責任さと身勝手さと無知がケミストリーを起こした思考によって多くのプレコ達が日本中で放逐されるわけである。
その後、ほとんどの野良プレコたちは冬の低水温に負けて死んでしまうのだが、
温暖な沖縄ではそうはいかない。
すくすく育って子供までこさえてしまうのだ。
しかもこの魚、基本的に沖縄の川ではほとんど向かうところ敵なしなのである。
全身ガチガチ
なぜなら異常にガードが堅いからだ。
誇張でなく鎧のような鱗をまとっており、国産の川魚や水鳥では咬みついても傷を負わせることすら困難である。
しかも硬い棘をもったヒレが四方に向けて飛び出ており、丸飲みすら至難であろうと思われる。
頭もガッチガチ。叩くとコンコンと鳴る。
…本種が多数生息する沖縄の安里川には1m程度のオオメジロザメ(Carcharhinus leucas)幼魚が侵入し、川魚を漁る。
本種もターゲットになるようだが、彼らを以てしてもこの鎧を食い破ることはできないようで、ヒレがズタズタになっただけでのうのうと生き延びるという。
サメでも無理ならもうダメだ。原産地での天敵であるワニでも連れてくるしかない。
このタフさゆえにバンバン繁殖してしまい、今では沖縄でティラピア類やグッピー(Poecilia reticulata)と並んで、最も多く見られる淡水魚の一種となっている。
本種の捕まえ方は至極簡単である。
まず適当な川や池で目視で探す。(比謝川、安里川など沖縄本島中南部に多い。)
あとは吸い込み仕掛けで釣ることもできるし、タモ網で掬ってもいい。
投網を打てば大漁間違いなしだ。
投網が苦手な僕でも一網でこれだけ獲れる。これが獲れない人はまず漁師にはなれない。
でもわざわざそんな道具を持ち出すまでも無い。
マダラロリカリアは水深が30cmもあれば平気な顔で水底の有機物を食んでいる。
己の防御力に絶対の自信を持っているのか、人が近寄っても案外逃げない。(たまに異様に警戒心の強い個体もいるが)
膝までズボンをたくしあげて、手づかみしてやればいいのである。
日本一奇妙な川魚は日本一捕まえやすい川魚なのだ。
唯一のネックは那覇空港行きのチケット代かかかる点である。
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